「フィジカル=vinyl」。ここ数年、そんなイメージが音楽業界には定着していました。レコード店の棚はvinylが主役。確かにvinylの復権は目覚ましく、アメリカでは2008年から連続で売上を伸ばし続けています。
でも、ちょっと待ってください。
2026年1月、カナダの音楽市場で「まさか」の出来事が起きました。CDがvinylに肉薄する週が出現したのです。
1月第2週、カナダで何が起きたのか
カナダの音楽ジャーナリスト、Alan Cross氏が毎週発表しているLuminateデータ(旧ニールセン・サウンドスキャン)によると、2026年1月第2週(1月15日付レポート)、カナダ国内のCD売上は前週比51.0%増の31,515枚を記録しました。
一方、同じ週のvinyl売上は前週比17.4%減の44,824枚。
週ごとの変動とはいえ、vinylの減少とCDの大幅な伸びが重なったことで、両者の差は約1.3万枚まで縮まりました。なお前の週(1月8日付レポート)では2025年通年の集計が確認されており、CDの2025年年間売上は約170万枚、vinylは約205万枚と、vinylが大きくリードした一年でした。
「Strange. CDs up, vinyl down.」—現場の驚き
Alan Cross氏自身も、この数字に驚きを隠せませんでした。彼はレポートの中でこうコメントしています。
「Strange. CDs up, vinyl down.」(不思議だ。CDが上がって、vinylが下がった。)
40年以上にわたって音楽業界をウォッチし続けてきたベテランジャーナリストの素直な感想。それだけ、この急激な変動は予想外の出来事だったのです。
なぜこの週にCDが伸びたのか?考えられる3つの要因
では、この週に何があったのでしょうか。いくつかの要因が考えられます。
1. 年明け”お小遣い消費”の後押し
12月から1月初旬にかけてはホリデーシーズンのプレゼント需要がフィジカル売上全体を押し上げる時期です。年明け直後の第1週は反動でいったん落ち込みますが、年明けセールやギフトカードの使用、正月のお小遣いなどが後押しして回復するパターンがあります。vinylに比べて価格が手頃なCDは、こうした「ちょっとした買い物」にマッチしやすいのかもしれません。
2. 特定アーティストのCDリリース
週ごとの売上変動には、その週にリリースされた作品のフォーマット構成が大きく影響します。CDをメインとした大物アーティストの作品やCD限定盤がこの週にリリースされていれば、数字を押し上げた可能性があります。Alan Cross氏のレポートには具体的なタイトルの記載はありませんが、CDを「選ばれる」フォーマットにしているアーティストが確実に存在することの証左とも言えます。
3. vinylプレス工場の”納期問題”の裏返し
vinylは依然として大人気ですが、発注から納品まで数ヶ月かかることも珍しくありません。「今すぐ作品をリリースしたい」「ツアーに間に合わせたい」というアーティストにとって、納期の読めるCDは今も現実的かつ合理的な選択肢です。
「CD復権」は幻想じゃない—長期的なデータも見てみる
もちろん、1週間の数字だけで「CDがvinylに取って代わる」と断言するのは早計です。2025年通年のカナダ市場では、vinylが約205万枚(前年比15.3%増)に対し、CDは約170万枚(前年比5.4%減)と、vinylがリードしているのが現状です(Alan Cross氏ブログ、2026年1月8日付)。
しかし、注目すべきはフィジカル全体の底上げです。Luminate 2025年カナダ年間レポートによれば、CDとvinylを合わせたフィジカルアルバム売上は前年比3.7%増の約380万枚を記録しました。ストリーミング全盛の時代にあって、フィジカル市場全体が成長しているという事実は極めて重要です。
また、アメリカでは2023年のCD売上が前年比約2.7%増の3,683万枚(Luminate)を記録しており、Z世代が「アーティストを支援したい」「所有する喜びを感じたい」とCDを買い求める現象も広く報じられています。
「CDは終わった」は早計—2026年、フィジカル市場は多様化する
今回のカナダ市場の急変動が示しているのは、フィジカル市場が「vinyl一極集中」から「多様化」のフェーズに入っている可能性です。
vinylはvinylで、アートワークの大きさや”聴く儀式”としての魅力で確固たる地位を築いています。一方でCDは、手頃な価格(vinylの半値以下もザラ)、コンパクトなサイズ(収納しやすい)、車での再生(CDプレイヤー搭載車は今も多数)、ライナーノーツや歌詞カードの読みやすさといった独自の強みを持っています。
「フィジカルを買いたいけど、vinylはちょっと高いし場所も取る…」というファンにとって、CDは理想的な選択肢なのです。
インディーズアーティストへの教訓:CDを”戦略的に”使う時代
このニュースから、インディーズアーティストが学べることは何でしょうか。
① CDを「劣化版」と考える必要はまったくない
vinylに押され気味に見えるCDですが、今回のデータが示すように、CDだけで週間売上が大きく動くこともあります。vinyl人気に惑わされず、自分のファン層に合ったフォーマットを選ぶべきです。
② 価格設定とタイミングが鍵
年明けや新学期など、価格感度の高い層がお金を使いやすい時期にCDがよく動く傾向があります。ライブ会場限定、通販限定、期間限定など、「今買う理由」を設計することで、CDの需要はまだまだ掘り起こせます。
③ “CD派”のファンを大切にする
vinylを買うファンもいれば、CDをコレクションしたいファンもいます。大事なのは、ファンが欲しいと思う形で作品を届けること。CDという選択肢をなくしてしまうことは、ある種のファンを切り捨てることにつながりかねません。
おわりに:2026年、CDは”ニッチ”から”選択肢”へ
2026年1月のカナダで起きた「CDがvinylに肉薄した週」—これは単なる統計上の珍事ではなく、音楽フォーマットの多様化を象徴する出来事だったのかもしれません。
vinylもいい。配信も便利。でも、CDにしかない良さがある。そう再認識したファンが、静かに、でも確実にCD売上を支えています。
あなたの作品を待っているファンも、もしかしたら「CDで欲しい」と思っているかもしれません。その声に応えるために、CDプレスという選択肢を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
CDは今も進化し続けています。NFCタグを埋め込んだスマートCD、エコ素材を使ったサステナブルなパッケージ、ファンが思わず集めたくなる豪華ボックスセット。CDプレスの可能性は、あなたの想像次第で無限に広がります。
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