「CDってもう誰も買ってないんでしょ?」
そんな声を耳にするたびに、データを見ると首をかしげたくなります。確かに、音楽の聴き方の主流はストリーミングになりました。でも、2025年のデータを一次情報源にあたって確認すると、CD市場には思わぬ”異変”が起きているのです。
K-POPアルバム輸出額は初の3億ドル突破。Z世代の間ではCDをコレクションする「#cdaesthetic」がTikTokでバズり、おしゃれなCDプレーヤーが若者の部屋のインテリアとして復活しています。
「CDは終わった」——それ、本当に正しいでしょうか?
本記事では、日本レコード協会(RIAJ)、アメリカレコード協会(RIAA)、韓国関税庁、ドイツ音楽産業連盟(BVMI)、スペイン音楽制作協会(PROMUSICAE)など、信頼できる一次ソースのデータを基に、2025年のCD市場の”リアル”を徹底解説します。
1. 日本市場:2024年CDシングル14%増、アルバムは微減
世界最大のCD市場である日本。その存在感は2025年も健在です。日本レコード協会(RIAJ)の「RIAJ Year Book 2025」(2024年データ)によると、CDシングルは前年比14%増(約422億円)と好調を維持しました。一方でCDアルバムは前年比4%減(約980億円)とやや軟調で、音楽ビデオ(DVD・Blu-ray)の大幅減が全体的な売上縮小の主因となっています。
なぜ日本のCDシングルが伸びているのか。その背景には、日本の音楽文化に深く根付いた「特典付きCD」の存在があります。握手券やフォトカード、イベント参加券などを目当てに、ファンが複数枚のCDを購入する——この独特の販売戦略が市場を支えています。
また、UHQCD(Ultimate High Quality CD)やSHM-CD(Super High Material CD)といった高音質CDへの根強い支持も見逃せません。日本のオーディオ技術の粋を集めたこれらのフォーマットは、国内だけでなく海外のオーディオマニアからも注目されています。
2. K-POPが変えた「CDの定義」:音楽からファンアイテムへ
グローバル市場で最も注目すべきは、やはりK-POPの存在です。韓国関税庁のデータによると、2025年のK-POPアルバム輸出額は3億170万ドルに達し、前年比3.4%増で過去最高を更新しました(出典:Yonhap通信、2026年1月16日報道)。
主要輸出先は日本(8,060万ドル)、中国(6,970万ドル)、アメリカ(6,400万ドル)。特に中国への輸出は前年比16.6%増と急回復を見せ、2022年以来初めて第2位に返り咲きました。一方で日本向けは10.2%減と苦戦しています。
K-POPの何がすごいって、CDの定義そのものを変えてしまったこと。彼らにとってCDは「音楽を聴くための媒体」ではなく、フォトカードや限定グッズがセットになった「コレクションアイテム」です。複数バージョンを集めたくなるパッケージデザイン、予約特典、サイン会応募券——まるでトレーディングカードのような戦略で、ファンの収集欲を刺激し続けています。
3. Z世代が起こす「#cdaesthetic」ムーブメント
TikTokで「#cdaesthetic」を検索してみてください。このハッシュタグには、おしゃれにディスプレイされたCDコレクションの動画が数多く投稿されています。
Z世代にとってCDは、もはや単なる音楽メディアではありません。ファッションであり、インテリアであり、自分らしさを表現する「レトロ・オブジェ」なのです。
彼らの消費行動は「ハイブリッド」です。日常的に音楽を聴くのはSpotifyやApple Music。でも、大好きなアーティストを支援したい、手元に形として残したい、部屋に飾りたい——そんな欲求を満たすためにCDを購入します。
このトレンドはハードウェア市場にも波及。Bluetooth対応のポータブルCDプレーヤーなどが若者の間でじわじわとブームを呼んでいます。
4. 世界のCD市場:一括りにできない複雑な状況
アメリカ:ビニール優勢、CDは22%減
アメリカレコード協会(RIAA)の2025年上半期レポート(ホールセール基準)によると、CD売上は1億810万ドル(前年同期比22.3%減)、出荷枚数は1,170万枚と減少傾向が続いています(出典:RIAA Mid-Year 2025 Report)。
物理メディア全体(約5億7,600万ドル)の中でCDが占める割合は約18.7%。ビニールレコードが同市場の4分の3以上を占め、5年連続でCDを上回りました。テイラー・スウィフトのような大物アーティストによる限定盤CDは依然コレクターズアイテムとして需要があります。
なお、RIAAは2025年から報告基準をリテール(小売)ベースからホールセール(卸売)ベースに変更しており、過去年比較には注意が必要です。
ドイツ:CDはいまだ物理市場の最大フォーマット
ドイツ音楽産業連盟(BVMI)の2025年通年データによると、物理市場売上は前年比5.9%減(3億4,500万ユーロ)。その中でCDはビニール(物理市場の44.2%)に押されつつも、依然として物理フォーマット最大の売上を維持しています(出典:Music Business Worldwide, 2026年3月)。
上半期だけで見ると、CD売上は前年同期比20.1%減(7,290万ユーロ)と大きく落ち込みました。ドイツ市場全体の成長率は2.3%と、前年の7.2%から大幅に鈍化しています。
スペイン:物理市場が全体で31.6%増、CDも9.1%増
スペインはCD市場に関してポジティブなニュースがあります。PROMUSICAE(スペイン音楽制作協会)の2025年通年レポートによると、CD売上は前年比9.1%増(1,260万ユーロ)と成長。物理市場全体も31.6%増と好調で、バッド・バニーやロサリアなどのビッグリリースが市場を牽引しました(出典:Music Ally, 2026年3月)。
韓国:国内販売は減少も輸出は過去最高
国内K-POPアルバム総販売数(国内+輸出)は2025年に約9,350万枚と2023年の1億2,000万枚から縮小。環境問題を背景にしたプラスチックCD批判や、ファン向けマーケティングの縮小が国内市場を圧迫しています。一方、海外輸出額は先述の通り過去最高を更新しており、内外でまったく異なる動きを見せています。
【データで見る】2025年 主要CD市場統計
| 地域/国 | 統計機関 | データ期間 | 主要指標 | 数値 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | RIAJ | 2024年通年 | CDシングル生産金額 | 約422億円 | +14% |
| 日本 | RIAJ | 2024年通年 | CDアルバム生産金額 | 約980億円 | −4% |
| アメリカ | RIAA | 2025年上半期 | CD売上金額(卸売) | 1億810万ドル | −22.3% |
| アメリカ | RIAA | 2025年上半期 | CD出荷枚数 | 1,170万枚 | −22.0% |
| 韓国 | 韓国関税庁 | 2025年通年 | K-POPアルバム輸出額 | 3億170万ドル | +3.4% |
| ドイツ | BVMI | 2025年通年 | 物理市場売上 | 3億4,500万ユーロ | −5.9% |
| スペイン | PROMUSICAE | 2025年通年 | CD売上 | 1,260万ユーロ | +9.1% |
意外と知らない?CDをめぐる豆知識
環境負荷:ストリーミングよりエコな場合も
「ストリーミング=エコ」というイメージ、実は単純ではありません。グラスゴー大学などによる研究では、アルバムを一定回数以上聴く場合、CDを購入する方がストリーミングよりも環境負荷が低くなるという試算もあります。ストリーミングは再生のたびにサーバーで電力消費が発生。一方CDは一度製造すれば、再生時のエネルギー消費はごくわずかです。
所有権:サブスクとCDの決定的な違い
ストリーミングサービスは「アクセス権」を提供するものです。権利上の問題で楽曲が配信停止になれば、もう聴くことはできません。一方CDは一度購入すれば永続的に所有できるという安心感があります。「好きなアーティストの作品は、形として残しておきたい」——そんな欲求は、デジタル時代だからこそ強まっているのかもしれません。
CDの寿命は本当に短い?「CD Rot」の真実
「CDは20年で劣化する」という話を聞いたことはありませんか?これは「CD Rot」と呼ばれる現象ですが、主に初期の製造不良や不適切な保管環境に起因するものです。適切に製造・保管されたCDは、数十年から100年以上の寿命を持つとされています。
まとめ:CDは”終わった”どころか、進化している
2025年のCD市場を一言で表すなら、「多様化」と「再定義」です。
日本では特典文化が市場を下支えし、高音質CDが根強い需要を持ちます。韓国ではコレクションアイテムとしての進化が輸出過去最高を生み出しました。Z世代の間ではレトロオブジェとして再評価が進み、スペインではCDが9.1%増という逆行的な成長を記録。ドイツやアメリカでは減少傾向が続くものの、物理メディアとしての存在感は依然として無視できない規模を保っています。
ストリーミングが音楽消費の主役であることは変わりません。でも、それと同時に「所有する喜び」「手元に残す安心感」「インテリアとしての美しさ」を求める人々が、世界各地で確実に存在し続けているのです。
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